眼精疲労について
1. 眼精疲労とは
- 一般的には、目を使う作業をした後に疲れたと感じる生理的な疲れを眼疲労と言い、休憩をとっても目の痛みやかすみ、頭痛などの症状が残ったり、あるいは回復したと思ったらすぐまた目の疲れが出てきたりするものを眼精疲労と言います。ただ、疲れの感じ方も個人差があり、ここまでが、眼疲労でここからが眼精疲労だと線引きするのは難しいと思います。
- 眼精疲労の主な自覚症状は目に関するものとして、目が痛い、眼が重い、ぼやけて見える、充血するなどがあります。目の症状だけではなく、頭痛や首筋の痛み、肩こり、などが起きることもあります。さらに進行すると、イライラや不安感、抑うつ、といった自律神経の症状へ発展することもあります。 (IT眼症、テクノストレス等)
2. 原因
- 眼精疲労の原因は多種多様で、実際には複数の要因が絡み合っていることが多いと思います。
1. 眼球に原因
- 屈折性:近視、遠視、合っていない眼鏡等
- 症候性疲労:ドライアイ、白内障、緑内障、など疾患から起こる疲労。
- 筋性眼精疲労:斜視、複視、など目をとりまく筋肉の働きの異常により、
両眼の位置がアンバランスになって起こる。
- 調節性眼精疲労:老視(いわゆる老眼)など、物に焦点を合わせる目の
調節作用が低下し、起こる疲労。
- 不同視、不等同視:左右の眼の度数に差がありすぎるため。
- 特に近年パソコンの普及などにより増加している「ドライアイ」は、涙の分泌量が少なくなり、乾燥しやすくなり目が疲れやすくなります。コンタクトレンズの使用時は、眼鏡の使用時よりもいっそうドライアイになりやすくなります。「ドライアイの症状を訴える約60%は同時に目の疲れを感じ,眼精疲労の患者の約60%はドライアイの症状がある」という報告もされています。実際、パソコン作業を仕事にされている方が、眼精疲労を訴え来院されたのですが、涙の分泌量を測定してみると正常の半分しかなく、ドライアイが原因だったということがありました。
2. 神経性疲労
- 眼球自体に大きな異常はない、またはあっても眼の疲れの原因とは考えられない。
- 読書やテレビゲーム、OA機材、パソコンなど長時間続けることや、 過労、睡眠不足、ストレスなどによる疲労。
3. 全身疾患など
- 過労、風邪、種々の疾患等。原因というより、悪化させる因子かもしれません。
- 体調が悪いときは、眼もすっきりしないことが多いです。
3. 自分で出来るケア
- 過労や寝不足、精神的ストレス、体調の崩れなどが、引き金となって目の疲れが表面化してくることがあります。規則正しい生活、特に睡眠を充分にとること、ストレスをためないようにすることは非常に重要な事だと思います。
- パソコンなどをするときは、長時間連続して作業をしないこと。1時間の作業で10〜15分間の休養をとることが必要です。しかし、これは職場などでは難しい事が多いようです。実際来院される患者さんのお話を聞くと、朝から夕方まで殆ど休み無くパソコンと向かい合っている方も稀ではありません。しかし、自分の目を守るのは自分しかいないという意識を持って、工夫して休憩を入れるようにしましょう。
- また、疲れがひどいときは、目を閉じて温かい蒸しタオルのようなもので、目の回りを温めるというのもよいと思います。
- また、先程述べたドライアイに関連してですが。パソコンなどを凝視していると、瞬きの回数が減ります。(通常20回/分が6回前後/分)そのため乾燥しやすくなります。意識して瞬きをしたり、モニターの位置を低くして、眼の開きを小さくする等の工夫をする。エアコンの風が直接当たらないようにする、特に冬場は加湿器を使用するなどの工夫をすると良いでしょう。
4. 市販の薬は使って良いのか?
- 基本的には使って構わないと思います。しかし疲れ目、とよく似た症状であっても白内障や緑内障をはじめとした他の多くの眼の病気がひそんでいることもあります。自己判断で市販の点眼薬に頼るだけでなく、一度眼科医に診察してもらい、その上で自分にあった点眼薬を選択しましょう。
- また、目が充血したときにそれを取り去る市販の点眼薬を使うと、一時的に充血が治ったような状態になります。これは、血管を収縮させる収斂剤による一時的な効果にすぎず、かえって慢性的な充血を引き起こす場合があります。充血が続くようなら、眼科医の診断を受けましょう。また眼科で使う点眼薬もそうですが、目薬には通常防腐剤が含まれているのですが、これがかえって目に悪さをすることもありますので、点眼しても症状が改善しなかったり、かえって調子が悪いときは、眼科を受診して下さい。
5. 病院ではどのような検査・治療をするのか?
- まず、眼鏡やコンタクトレンズの度数が合っているかを含めた視力検査、眼圧検査、眼底検査など一般的眼科検査を行い、必要に応じて涙の分泌量の検査や、視野検査などの検査を行います。特に眼精疲労に特別な検査というものはありません。
- 眼精疲労の治療としてこれをすれば治るといった治療法は残念ながら無いのが実情です。まずは、原因のところで述べた原因がわかり、それが除去可能ならそれを除去することが第一と思います。合ってない眼鏡ならばきちんと合わせ直す。老眼鏡が必要なら合わせる。眼の病気があればその治療を行う。パソコンや読書は長時間続けない等です。次に対症療法ですが、ビタミンB12剤の点眼、またドライアイのある人は、角膜保護剤や人工涙液の点眼を併用したりすることもあります。温罨法(おんあんぽう)・冷罨法(れいあんぽう)という処置があります。簡単に言うと温めることと冷やすことですが。温める・冷やすのいずれも疲れ目に効果があります。血管を刺激して血液の循環を促進させることで、目や目周辺の筋肉をリフレッシュさせるという方法です。また温める事で筋肉のまた温めることでドライアイが改善する事もあります。(眼の表面を保護する油の分泌をよくするため)
- ただし、目の状態によっては温めないほうがいい場合もあるので注意が必要です。かかりつけの眼科の先生と相談されて下さい。
- 当院で行っている眼精疲労治療はこちら
6. どんなときに病院に行けばよいのか?
- とにかく不調を感じたら、自己判断せずに眼科医を訪ねて一度専門的な検査を受けられたほうがいいと思います。
- 特に老眼が始まる42−43歳以降というのは加齢による目の病気である「白内障」や「緑内障」などがみられるようにる時期でもあり、初期症状としては目の疲れを感じることもあります。いつのまにか目の病気が進行するのを防ぐために、念のため眼科で検査してもらうと安心です。
7. その他のアドバイス
- 規則正しい生活、特に睡眠を充分にとること、ストレスをためないようにすることは非常に重要な事だと思います。
- 長時間のパソコンや読書、テレビを見る事は、それ自体で病気を引き起こすわけではありませんが、疲れを感じるようであれば、それは無理をしていることになります。ほどほどにしておく事だと思います。
上記内容は、『Monet sumer 2004 教えてドクター!(みかんコミュニケーションズ)』に掲載されました。
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