緑内障について
1. 緑内障とは
目のしくみについて簡単に述べます。
- 目をカメラにたとえると、外から入った光 は角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を通り、フィ ルムの働きをする網膜にピントが合うしくみ になっています。網膜で受けた光は、ここで 電気の信号に変わり、視神経を伝わって脳の 視覚中枢に到達して、はじめて私たちはものを見ることができます。この順路のどこにトラブルがおこっても、ものを正常に見ることはできません。
- 緑内障はそのうちの視神経が、何らかの原因で障害され視機能が低下(視野が狭くなる、末期には視力が低下等)してしまう病気です。一般には眼圧が高く(21mmHg以上)なることがその原因の一つと言われています。しかし最近では、眼圧が正常範囲内(10〜20mmHg)でも緑内障(正常眼圧緑内障)になることがわかってきました。これは、視神経の眼圧への抵抗性が相対的に弱いためと考えられ、緑内障の原因として眼圧だけではなく、視神経周辺の血液循環なども関与していると考えられています。
- 反対に眼圧が高くても、緑内障の障害を示さない場合(高眼圧症)もあります。
- 眼圧とは簡単にいうと目の硬さのことでその硬さがほぼ一定であるために、目は球形に保たれています。眼圧がほぼ一定に保たれているのは、目の前方にある房水 が、24時間絶え間なく流れているためです。毛様体でつくられた房水は、水晶体や角膜に栄養を補給して、隅角から流れ出ることによって一定量に保たれ、その結果眼圧が一定になるのです。ところが緑内障では、房水が流れ出る隅角 になんらかの異常がおこって、眼圧が上昇すると考えられています。
- 2000〜2001年に岐阜県多治見市で行われた、緑内障疫学調査(2003年発表)では、40歳以上の約5.8%が緑内障と診断されました。17人に1人の割で発症する、ありふれた病気と考えられます。またその割合は年齢と共に上がり、70歳以上では約10人に1人となっています。また、日本では正常眼圧緑内障の割合が多いことがわかりました。
- また、日本人の失明原因として緑内障は糖尿病性網膜症についで第2位です。
2. どのくらい種類がある?
いくつかの種類があります。
- まず、原因によって、1.原発緑内障(原因不明)2.続発緑内障(ほかの眼疾患、全身疾患あるいは薬物使用が原因)3.先天緑内障(隅角の先天異常)に分けられます。
- 広く“緑内障”と呼ばれるのは原発緑内障のことです。
- 原発緑内障は隅角の状態により、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の2つのタイプに分けられます。一般的なのは開放隅角緑内障の方です。
- また徐々に症状が進行する慢性緑内障(開放隅角緑内障と一部の閉塞隅角緑内障)と急激に激しい症状が現れる急性緑内障(閉塞隅角緑内障)があります。
3. 主な症状
- 慢性の場合、視野が狭くなることが代表的な症状ですが、徐々に進行するので初期には自覚症状はほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることが多くあります。「何となく眼が重い、目が疲れる」などの症状がある場合もありますが、これらは緑内障に特徴的なものではありません。ほかの病気で眼科を受診して、たまたま緑内障が見つかると言うことも稀ではありません。
- 一方、急性の場合は、急激に眼圧が上昇するため、突然、目の痛みや充血、頭痛、吐き気など激しい症状を起こします。このため、緑内障と気づかず、内科や脳外科などを受診することもあります。しかし、早急に治療して眼圧を下げなければ、数日で失明してしまう恐れもありますので、注意が必要です。
4. 原因は
- 眼圧上昇が原因の一つであることは間違いありませんが、なぜ眼圧が上がるのかと言うことに関しては残念ながら原因はまだわかっていません。
- また、正常眼圧緑内障で述べたように、視神経周囲の循環障害も原因と考えられていますが、まだはっきりしていません。
5. どんな検査がある?
- 緑内障であるかどうか見分けるには、眼圧検査、眼底検査、視野検査、隅角検査など多くの検査が必要です。これらの検査を何回も繰り返して、緑内障の状態を判断し、経過を観察するために定期的に検査を行います。
- 眼圧検査:
- 直接、目の表面に測定器具をあてて測定する方法と目の表面に空気をあてて測定する方法があります。緑内障発見のための重要な検査です。
- 眼底検査:
- 視神経の状態をみるために、視神経乳頭部を観察します。視神経が障害されている場合、陥凹(へこみ)の形が正常に比べて変形し大きくなります。緑内障発見のための必須の検査です。
- 視野検査:
- 視野の欠損(見えない範囲)の存在の有無や大きさから緑内障の進行の具合を判定します。
- 隅角検査:
6. 体質は関係ある?
- 一般には緑内障は親族に緑内障があるとなりやすいことは事実です。しかし、必ず遺伝するという強いものではなく、緩やかなものです。
- 家族に緑内障の方がある場合は、早めに眼科受診しましょう。
7. 男女差や多く見られる年齢は?
- 男女差は殆どありません。しかし、急性のタイプは60歳以上の遠視の女性に多い傾向があります。年齢は先程述べたように、高齢になるほど多くなります。
8. 放っておくとどうなる?
- 急性の緑内障は、眼科で至急に処置をしなければ数日で失明することもあります。慢性の場合も徐々にですが進行してゆき、放置しておくと失明してしまいます。
9. 身体への影響は(何かほかの病気が潜んでいることもある)?
- 眼の炎症等他の疾患から眼圧が上がる(続発緑内障)ということはありますが、緑内障があるから、身体の他の部位が病気になるということはありません。
10. 治療方法は(効果は、副作用はなどは)?
- 視神経は、一度そこなわれると回復することはできません。そのため緑内障の治療の目的は、緑内障がそれ以上進行しないようにすることです。
- 現在の所、緑内障の進行を食い止めるのに有効とわかっているのは、眼圧を下げることだけです。
- 治療はまず、点眼薬を用います。最近はいろいろな点眼薬があり、これらを単独または組み合わせて治療していきます。点眼で不十分なときは内服薬を併用することもあります。
- 最近の点眼薬は、眼や全身の副作用は少なくはなりました。とはいえお薬ですので副作用が全くないわけではありませんので、異常を感じたらすぐに眼科医に相談して下さい。また、喘息、心臓病、腎臓病などの持病のある患者さんも、かならず眼科医と相談してから治療を開始して下さい。
- 上記の点眼、内服でも眼圧が下がらない場合は、緑内障のタイプによってはレーザー治療を考えることもあります。また、急性緑内障の場合もレーザー治療を行います。レーザーはメスの替わりにレーザー光を用いるので眼球自体に切開を加えずにすみ、比較的安全に外来でも行うことができますが、レーザー治療は全てのタイプの緑内障に適応できるわけではないので、眼科医との十分な相談が必要です。
- 以上の点眼薬、内服薬やレーザー治療でも効果が思わしくないときは、手術治療を行います。眼球を切開して房水が通る道を拡げたり、新たにつくったりして眼圧を下げますが、ときに再手術が必要なこともあります。
11. 完治する?
- 緑内障が完治してしまうということはありません。一生の管理が必要となります。しかしながら、コントロールして視神経の障害を食い止めることは可能ですので、医師の指示を守り、定期検査を受けて下さい。
12. 生活の中で気をつけることはありますか?
- 緑内障だからといって、特別な生活上の注意はありません。ただ、たくさんの水分を一度にとると、眼圧上昇の可能性があるようです。タバコも奨められません。規則的で無理のない生活を心がけて下さい。
13. 最後に
- 緑内障は多くの場合、自覚症状がなく、また一度障害された視神経をもとにもどす方法はありません。そのため早期発見、早期治療は重要です。最近はいろいろな点眼薬があり、以前とするとかなり治療しやすくなってきています。
- はじめに言いましたように、緑内障は決して稀な病気ではありません。40歳以降の方には年に一回程度の検査をお勧めします。また職場検診や人間ドックの眼底検査(眼底カメラ)は早期発見に有用ですので積極的に利用して下さい。
上記内容の趣旨は、『朝日新聞 長崎県版 おはようASAHI 268号 知りたい健康 Vol.68「緑内障」』
(2004/11/1)に掲載されました。
画像出展:参天製薬ホームページ及びファイザー株式会社ホームページより
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